海外視察報告


 1月28日から2月3日までの7日間にわたり、環境、福祉、経済、交通政策等の行政事情を視察テーマとし、韓国・富川(プチョン)市、ニュージーランド・オークランド、オーストラリア・シドニーの諸都市を訪問させていただきました。
 昨今、議員の海外視察に対して風当たりの厳しい折ですが、国際性を意識した都市経営は大変重要なことです。この視察で学んだことを今後岡山市政にどのように生かして行くのかが問われているのだと思っています。



〜〜韓国・富川市〜〜

 韓国の富川市では、高谷市長、宮武議長からのメッセージを携えて、富川市長、議長をそれぞれ表敬訪問し、これまでの友好交流の経過を振り返るとともに、今後もより一層の相互理解と親善を深めていくことを確認した。
 また、表敬訪問に引き続き、政令市移行に伴い市内4カ所に設置される区役所業務の参考とするため、富川市で最大規模の遠美(オンミ)区庁を訪問し、区長をはじめ幹部職員と意見交換を行うとともに、窓口業務が細かく分かれておらず、1カ所の端末で必要とするサービスがほぼ賄われるシステムを視察させていただいた。本市以上に電子化の進んだこの市民サービスシステムは今後研究すべきものではないかと感じた。

    
                                                     
韓潤錫(ハン・ユンソク)議長を表敬訪問



〜〜ニュージーランド〜〜

 ニュージーランドのオークランドにおいては、民間が果たしている高齢者サポートの現状を視察するため、エイジ・コンサーンというNPO法人を訪問した。この団体は会員からの会費、寄付金等によって成り立っており、ニュージーランド国内に30の支部を持ち、孤独、経済的問題、体調不良などに直面する高齢者の方々をボランティアがサポートし、より良い生活環境を提供することを目的とされている。
 日本と同様に、ニュージーランドも高齢社会が到来しており、高齢者が自宅で独立した生活をなるべく長く続けることができるように高齢者サービスに関する情報提供、関係機関との連絡調整、高齢者虐待防止の啓発活動、健康セミナーの開催などさまざまな活動をしている。
 この国では、概して、子どもは成人すると親元を離れて独立し、子どもが親の面倒を見ないというのが一般的であるという。そこで、地域住民がその地域の高齢者の方々をお世話するという仕組みだが、住民同士の助け合いの意識が醸成されているところが素晴らしい。
 同じく、ニュージーランドのゴミをゼロにしようという資源循環型社会を目指す活動を行っているNPO法人、ゼロ・ウェイスト・ニュージーランド・トラストを訪問した。
 ゼロ・ウェイストとは、埋め立てと焼却をゼロにする一方で、発生した廃棄物はすべてリサイクルによって再資源化することを目指す考え方である。日本では焼却処分が中心だが、ニュージーランドでは、地球温暖化に配慮して、既に焼却は行われておらず、国内の72%の地方自治体がこのゼロ・ウェイストを宣言しているという。
 オークランドでは、ゴミの最終処理に埋め立て方式を採用している。住民のゴミは、リサイクルゴミと一般ゴミに分けられており、一般ゴミは週1回、市が配布している可動式のごみ箱に入れて回収されている。
 ゼロ・ウェイスト宣言後は、市民の意識が次第に変化し、現在では生ごみ処理機を使用し、ゴミの減量化に取り組む家庭が増えている状況であるとのことだった。実際に街角で見かけたゴミの排出状態はきちんとされていて、経済格差の激しい移民の国であることを感じさせないほどルールが守られていたことは立派である。
 続いて、ファミリーサービスセンターを訪問した。ここでは、どちらかというと生活が豊でない、家庭のための施設で、就学前の子どもたちと親が参加して一緒に学べるコースがある。
 親が一緒に参加することによって、子どもの教育の大切さを肌で感じることができる。また、近隣に共働きの家庭が多いため、母親が孤立しないように、このセンターに来ることによって、母親同士の交流や情報交換を行うことができるという。子育てに悩み、相談場所を求める母親は日本だけではないのだ。
 次に、知的障害者とその家族に対して、多くのサービスを提供しているihc(アイ・エイチ・シー)という機関を訪問した。ここでは、知的障害児を抱えて精神的、肉体的に疲れている家族に対して、他の家族が一時的にその子を預かる手配を行ったり、あるいは成人を迎える方には職業人として独立できるようにアドバイスをしたり、また、知的障害の方々が共同して自立した生活が送れるようにアパートを借りたり、スタッフが常駐するなどのサポートをしている。
 特に、ニュージーランドでは、16歳以下の知的障害者の方を施設に預けるのではなく、その家庭で過ごさせることが大事だと考えている。
 施設中心の我が国においても、多くの課題のある福祉の分野である。どうしてこんなに違うのか、そんな理想的なことが簡単にできるはずはないとの疑念は最後まで払拭できなかった。
 次に、オークランド郊外において、面積が約14ヘクタールで、キーウィフルーツ、柿、オレンジ、グレープフルーツなどを栽培している果樹園を訪問した。そこでは、生産・流通問題、後継者問題について、果樹園経営者から説明を受けた。農業国ニュージーランドにおいても、農産物の価格の低迷から苦しい農場経営を余儀なくされている状況をお聞きした。

                                                             
                                                             
真っ赤なガウンの正装で大歓迎のウィロビー市長



〜〜オーストラリア〜〜

 オーストラリアのシドニーにおいては、主に観光客向けにシドニー中心部を走るモノレール、また、小型の電車で、一部道路の上を走る路面電車でもある、最も新しい交通手段のライトレールの体験乗車を行った。その後この新交通システムについて、ノースサウスウェールズ州議会議員より説明を受けることができた。
 このライトレールは民間により経営されており、中心部のセントラル駅から郊外のリリーフィールド駅までの1路線が走っているが、今後さらに路線を延長するとのこと。またビジネス街、住居地域までを結んでいく計画もある。特に環境問題を強調され、車中心の交通体系からの転換を図っているところであることをお聞きした。本市にも路面電車化の計画があり、興味深く聞かせていただいた。
 続いて、現在シドニー近辺で最も都市再開発が進んでいるウィロビー市を訪問したが、市長自ら正装である真っ赤なガウンでお迎えをいただいた。そこでは、行政執行責任者であるジェネラル・マネージャーから市勢の概要について説明を受けた後、幹部職員らと都市計画、ゴミ問題、子育て支援、図書館運営等について活発な意見交換を行った。
 特に、人口増を予想し大規模な開発を進めているが、リスクはないのか、誰が責任を取るのかと嫌がられるような質問もさせていただいた。
 さらに、在オークランド並びに在シドニー日本総領事館、財団法人自治体国際化協会シドニー事務所を訪問させていただき、ニュージーランド、オーストラリア両国の政治・経済の状況、地方自治制度等についてお話を伺うとともに、意見交換を行った。
 今回の視察でも視察先の現地情報収集、受け入れ相手側との交渉は、民間の旅行会社に依頼するなかで行ったが、決してスムースに日程調整ができたのではない。
 同じように、地方都市が独自で外国の都市と直接輸出・輸入などの交渉をしようとしても簡単ではない。外務省の総領事館の敷居は高く、容易ではないと思うが、上手く活用させていただくやり方もあるのではないか。
 或いはまた、自治体国際化協会は海外の自治体の都市経営を研究する目的で、各自治体の拠出金で運営している団体である。自治省からの出向と地方自治体からの出向職員で構成されていることもあり、敷居の高さは全く感じられない。例えば、本市の農業特産物や優れた特産品など外国での交渉窓口になってくれそうな組織なのである。
 こうした機関は、我々地方自治体から積極的に働きかけ、活用しなければならないのだと強く感じた。




農業国ニュージーランドでの果樹園経営の実態を聞く



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