岡山市の農業について考える



 農業の現況

 岡山市の農地面積は徐々に減少し9,000haで全国22位、農業従事者の平均年齢は70歳を超えたが、農家戸数は全国5位という現状にあり、まぎれもない有数の農業都市である。
 本市の農業施策として積極的に行うべきことは、近代化施設・機械等の設備投資への助成、農産品の高付加価値化、地産地消の取り組みなどであり、そして、新規営農者育成など営農継続につながる支援なのだが、こうした施策が残念だがあまりなされていない。国や県もそれなりにこうした事業を予算化しているが、本市は積極的にこの予算の獲得に動いていない。
 かつては経済局に農林部がおかれていた。中国地方の国の出先は広島に集中しているが、中四国農政局だけが岡山市にある。こうしたこともあり、本市の農林部長は歴代農林水産省からの出向職員であった。農水省と密に情報交換できる立場にありながら、その優位性を生かし切れていない。





 輝かしい歴史

 遡れば江戸時代には、備前藩主・池田光政らによって大規模な干拓が行われ、広大な新田が生まれた。備前平野と呼ばれ、米づくりが盛んに行われるようになる。この広大で豊かな農地は、先人が残した岡山市の遺産とも呼べるもので、これからも十分に活用できるものである。
 また、大正時代になるとこの地域では、トラクター利用などの機械化が全国に先駆けて行われるなど、近代化農業をリードしていた。
 加えて、フルーツ王国と呼ばれる岡山であるが、ぶどう・桃などの果物についても、熱心に研究開発をした先人がいたからであることも忘れてはならない。
 こうした様々な分野で輝かしい歴史・伝統を持つ農業都市であることを思い起こし、全国をリードする気概を持って岡山の農業の再生を図らなければならない。





 土地改良事業

 岡山市においては、土地改良事業、用排水路の改良事業に多額の予算を投じてきた。同じハード事業でも、圃場整備など道路を付け農地の区画を整える事業であれば生産性の向上に寄与するが、水路の整備では多くは期待できない。本市のように、これだけ水路護岸がコンクリート化された集落は他都市には見られないものである。
 これには歴史的な経緯がある。土地改良事業には地元負担金を徴収するのが一般的なやり方だが、岡山市の場合、地元負担金をゼロにして水路改良を優先的に進めていった。
 また、事業費は土地改良区が市を保証人とし、農協等から借り入れ、市が償還を行うという手法を取った。そのため、改良区の水路改良は一挙に進んだ。その結果、償還額が異常な額に膨れ上がり、本市の隠れ借金として大きな議論を呼ぶことになったのは記憶に新しい。つまり、農業予算の多くがこの償還金に充てられるという異様な状況であった。
 その後水路改良事業は、その進展に伴い新規事業が減少することになった。それにより、農業予算の多くを占めていた水路改良事業費、償還費が減少しているので、本来行うべき事業に充てるべきである。





 土地改良事業と開発許可

 もっと言えば、この土地改良事業は思わぬところで農家を苦しめている。土地改良事業を行うには、事業費に見合う受益地が必要になるが、受益者の負担金がゼロなので同意は訳もない。だが、受益地になった以上は容易に農業振興地域から外れることにはならない。
 農業予算が投入されている以上、農業目的以外への転用は認められないのは当然である。これを十分理解して土地改良事業に同意すべきである。あたかも、都市計画法上の開発規制であるかの如く論じられるが、決してそれだけではない。





 米農家への支援

 コロナ禍で飲食店が使う業務用需要が低迷し、新米価格が前年より大きく落ち込んでいる。このままでは米農家の生産意欲が減退することが危惧される。そうでなくても農業者の高齢化が進み担い手不足が懸念されているが、いよいよ正念場を迎えている。
 茨城県有数の米どころ・稲敷市では、緊急経済対策として、農家支援のための独自の補助金交付を決めた。「主食用水稲次期作付け支援事業」として、10アールあたり5千円を補助するとのこと。
 本市でもこのような農家支援を早急に対応すべきと考える。農家は農協等に出荷した際に概算金を受け取る。最終的には、実際の販売価格に基づいて追加払いが行われ清算されることになるが、今年の額が昨年を大きく下回っており、農家のやり場のない怒り、悲痛な叫びに何とか応える必要がある。


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